「ファーストキスってホントにレモンの味すんのかな。」
「は…?」
―――しまった。
そう思ったときには時既に遅し。
慌てて口に手を当てたあたしを向かい側の席に座っている赤髪の少年は、ポカンとした顔で見つめてる。
カーッと下から上へ這い上がってくる熱にあたしは顔を歪めた。
日直の仕事のため日誌を書いていたあたしの向かい側に、
同じく日直の丸井が座って他愛もない会話をしながら仕事をしていたのが数分前。
いつものようにガムを噛んでいる丸井を見ながら
ふと思ったことが口に出てしまった。
その口元に視線を向けてしまったのが運のつき。
――バカッ。
何言ってんのあたし…!
恥ずかしい!
「っ!ちがっ、今のはちょっと…
「何だよ、いきなり。」
「〜っわ、忘れて!お願いだから今の忘れて!!」
手をブンブンと振り必死に抗議するあたしを丸井は少し困ったように笑って見てくる。
心臓が口から出てしまいそうなくらい動揺して慌てるあたしから、丸井はそっと目を逸した。
もうホントに最悪ッ!
戻れるならさっきに戻りたい…。
絶対丸井にキモイって思われた、終わった。あたしの人生終わった。
何であんなこと言っちゃったのバカー!
羞恥心が限度を越し、泣きそうになった。
顔も耳も目頭も熱を持って、熱い。
「……。」
「……。」
「…?」
「っ、…何?」
「もしかしてさ…お前キスしたことねぇの?」
「えぇっ!?」
相変わらず器用にガムを膨らませながら、丸井はそんなことを言ってきてあたしは目を丸くして叫んだ。
何で、何でそんなこと聞くの。
あるわけないでしょ、あったらファーストキスのってホントにレモン味?なんて
アホの子みたいなこと言わないからっ!
丸井と違ってどうせ恋愛経験なんてほとんどないですよ!
「…な、いよ。」
「…。」
「ないない、どうせ彼氏いたこともない女だし。」
「…ふーん。」
「…っ、ねぇお願いだからもうさっきの話は忘れて!あたし素で恥ずかしくて死にそうなのっ!」
「ハハッ。」
「わ、笑わないで!」
人が真面目な話をしてるのに丸井はその可愛い笑顔をあたしに向ける。
どうもからかわれてる気がしてあたしは真っ赤になってるのがバカらしくなり、
丸井から目を逸すと書き途中だった日誌にまたペンを走らせ始めた。
「……。」
「なあ、。」
「…何?(今度は一体何だってのさ!)」
「あのさ…」
「…?」
「…試してみる?」
は…?
頭の上に疑問符が飛び交う。
丸井の言ってる意味がわからない。
あたしは日誌を書く手を止めて丸井をじっと見つめ返した。
試す…?
…………え?
「…ん?」
「…だから、試してみるかって。」
「な、何を?」
「キス。」
「はぁ!?」
目玉が飛び出すかと思った。
頬が、体が熱くなって全身が心臓のように脈打つような感覚に眩暈すらしそうで…。
体が動かなかった。
丸井から目が逸らせなくてペンを落としたのに、拾う余裕すらない。
何言ってんの。
試す?ってそれってどうゆう意味かわかってんの。
キス…
キスって。
それって、丸井とキスするってことでしょ…?
じ、冗談だよね?
一向に何も言わないあたしに丸井は不満げに呟く。
「…やだ?」
「や、やだってゆうか…冗談でしょ?」
「は?冗談でこんなこと言うわけねぇじゃん。マジだから。」
「…う、そでしょ。」
「そんな言うなら試すって言ってんだろぃ?」
「…ちょっ、
ガタンッとイスが倒れる音。
立ち上がった丸井の瞳に吸い寄せられるように見入ってしまうあたしの後頭部に、
丸井の手が添えられる。
目を閉じる余裕もない。
鼻先には丸井の顔があり、
目を閉じた丸井の睫毛の長さに半ば感動を覚えつつ、
触れ合う唇の熱に呼吸をすることすら忘れた。
香ってくる甘い香りに眩暈すら覚える。
重なっていた唇をゆっくりと離されて、目を開けた丸井と視線がぶつかった。
震える指を唇に当てる。
「…どうだった?」
「……グリーンアップルの味だった…。」
小さく呟いたあたしを見て丸井はプッと噴き出す。
当のあたしは未だ夢心地で唇に指を当てたまま、
目の前にいる自分のファーストキスを奪った赤髪の少年を見つめてた。
「じゃあ…ファーストキスがレモン味ってのは俺らとっては迷信だな。」
「…そりゃ、相手が丸井だったら誰だってそうでしょ。……ん?」
「…?」
「“俺ら”?何言ってんの、丸井は違うでしょ?」
だんだん我に返りはじめて、自分に起きた大事件を自覚する。
丸井とキスしてしまったことを考えると速まる鼓動を抑え切れず早口になった。
…丸井はモテるしキスしたことがないわけない。
何言ってんの…?
「なぁ、俺がいつキスしたことあるって言ったよ?」
「え…、でも丸井モテるし普通に経験あるでしょ?」
「ない。」
「う、嘘だ!」
「ないって。…俺、超一途だし?」
「……。」
―――うそ。
ホントに?
ホントに丸井もファーストキスだったの?
じゃあ、一途ってことは…
呆然とするあたしの顔を見ながら、丸井は眉間にシワを寄せて口を尖らせた。
「あ〜…結構ショックなんだけど。俺そんな軽く見られてたのかよ。」
「軽くっゆうか…まぁ、うん。」
「ひで〜。」
「ふふっ。」
これって期待してもいいのかな。
一途って言葉信じて、丸井のファーストキスはあたしだって思ってもいいのかな。
「…俺さ、好きでもない奴にキスするような男じゃないぜ?」
「…うん。」
「…キスしたのマジでが初めてだし。」
「…うん。」
「…俺、が好き。」
「…うん…あたしも丸井が好きだよ。」
重症、つける薬なし
(恋という病に侵された2人)
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Thank you for 150000 hits over !!
For 萌 From 【smile×smile】
2008.4.11
王道ネタに敢えてチャレンジしてみました。
書いていて恥ずかしくなって大変でしたが何とか書き終えることが出来ました!(笑)
遅くなってごめんなさい。
企画参加ありがとうございました!